2011/1/27 事務局から

メンタルヘルスの予防とアサーティブネス

メンタルヘルスの予防のために、アサーティブトレーニングはどのように効果があるのでしょうか。先日(1月14日)、中央労働災害防止協会「平成22年度 心の健康づくりシンポジウム」でお話しさせていただいたことを、ここで少しまとめておきたいと思います。

今回のテーマは、「『今こそ"攻め"のメンタルヘルス対策』~ストレス耐性からのアプローチ」でした。そこで「アサーティブトレーニング」とは何か、どのように役に立つのかという視点でシンポジストの一人として発表をさせていただきました。

アサーティブネスがメンタルヘルスの予防にどのように効果があるかについては、3つの視点でご紹介をいたしました。

1.アサーティブ「トレーニング」は、感情のコントロールと適切な言語化の訓練

ネガティブな感情を感じると、私たちは「ため込む」か「爆発させる」かのどちらかになりがちです。しかし、感情が人間関係に影響を及ぼし始める段階で、適切に「言語化」することで、ストレスをためないことができるのです。例えば、「○○に困っている」「△△に悩んでいる」「××を負担に感じている」ということを、飲み込んだり相手に察してもらったりするのではなく、自分の言葉で適切に表現する「訓練する」のです。

問題がなるべく小さいうちに(気持ちが大きくなりすぎて対処できなくなる前に)言葉にすることで、感情に振り回されるのではなくむしろ自分で感情をコントロールできるようになるのです。

2.「個人的達成感」「自己信頼感」が向上し、"打たれ強く"なる

2001年度に九州の病院の看護師を対象に研修を行い、アサーティブトレーニングの効果測定を行いました。45名の看護師を対象に、研修の前と研修6カ月後に調査を行い、受けなかった看護師層との差異を測定しました。

その結果、受講した看護師は「個人的達成感(personal accomplishment)」(職務にかかわる有能感や達成感に向上が見られたこと)、及び、「自己尊重感(self esteem)」(自分を大切にできること)の向上に有意の差が見られました。またコミュニケーション上では、「交渉できる力」と「正当な批判を受け入れる力」がいずれもアップしていました。

一言でいえば、「打たれ強くなった」、ということになると思います。

3.若手は「問題解決力」と「相談力」の向上で、早期問題解決行動へ

2009年度に実施したある民間企業での従業員調査では、トレーニングによって特に若手の「問題解決力」と「相談力」の向上という結果になりました。「問題解決力」とは、ストレスの原因や問題に対して、情報収集や解決実行など積極的な問題解決を行う対処方法。「相談力」とは、問題を解決するために周囲に相談するなどして支援を求める対処方法です。

具体的な「伝え方」が身につき、早めの相談、早期の問題解決のための行動に結びつくことでストレスに対する耐性を高めることになる、ということです。

※第2点目の「看護師を対象とした効果測定」については、論文が発表されています。英文ですがご興味のある方はどうぞご参照ください。

【 論 文 】
Relationship between self-esteem and assertiveness training among Japanese hospital nurses. J Occup Health 2004:46:296-298.

Relationship between burnout and communication skill training among Japanese hospital nurses: A pilot study. J Occup Health 2003:45:185-140.