2011/5/26 事務局から

双方向のエンパワメント

先週末は第7回アサーティブジャパンの総会がありました。全国各地から会員の方々が駆けつけてくださり、活発な議論で盛り上がりました。

総会の後、記念講演として特定非営利活動法人NPOカタリバの方にご講演をいただきました。タイトルは「ナナメのコミュニケーションとは」です。

社会は『人がつくるもの』だということ。この社会に生きる私たち一人ひとりが、今よりも少しずつ自分や周りの人に対する優しさと責任感を持ち、働きかけられる社会になれば、もっと元気な社会になるのではないか」。このことを実現するために、高校生に自分を考える機会を提供する、大学生の先輩たちがその機会のお手伝いをする、そんなしくみをつくりだしたNPOです。

なによりもすばらしいなと思ったのは、受け手も与え手もどちらもがエンパワーされる「しくみ」でした。私たちNPOの活動は、サービスの「受け手」がエンパワーされることを目的として活動を進めていきますが、"カタリ場"では、サービスの「与え手」自身もものすごくエンパワーされる。高校生も元気になるけれど、高校生と対話をした大学生(大人)自身が、「言葉が通じた」と涙を流し成長していく。他者と真剣に関わろうとすることの中から信頼関係が生まれ、大学生(大人)自身も自己信頼を取り戻していく。

「受け手」と「与え手」の双方向で対等なかかわり合いが、「やってあげる」という一方通行の"上から目線"からではなく、対等な視線で信頼関係や希望、生きることの意味を、一つひとつつむぎだしていくというプロセス。

NPOが提供する"サービス"は、おそらく、"完成された物を提供すること"ではなくて、先駆的で実験的で創造的なもの、社会の問題を解決するための手探りの"何か"を、作り手と受け手が対等に関わりながら作り出していくもの、なのだと思います。希望とか信頼、可能性という新しい価値を、試行錯誤で見つけていくプロセスそのもの、と言ってもいいのかもしれません。

「大人になりたくない子供たちが、大人になりたくなる。」

絶望の波に飲み込まれそうな環境の中で、大人と関わることから、子どもたちが希望をもって「生きていこう」と思えるようになる。

そうした「場」を、クリエイティブな形で、たくさんの協力者を得て、広げていっているカタリバの活動に、心が震えました。世の中まだまだ捨てたもんじゃないな、この社会をよくしていきたいと真剣に考えている人たちがたくさんいるんだな。そうした希望を、私自身もたくさんいただくことができました。

カタリバは、今回の震災で被災孤児になった子どもたち、及び被災地の子どもの心のケアに合わせ、学び・自立の機会を継続的に提供するための「ハタチ基金」を設立しています。