2011/11/16 講座から
アサーティブであればすべての人とうまく行くわけではない
自分がアサーティブになれば、嫌いな人はいなくなる、と思われている方がいらっしゃるようです。残念ながら、アサーティブになるということは、周りの人すべてを好きになったり、すべての人との関係がよくなる、ということではありません。
私たちは、今まで以上に価値観も文化も考え方も多様な社会の中に生きています。今回の大震災の後でも、身近な人たちとの思わぬ価値観の相違に改めて驚いたという人もいたのではないでしょうか。従って、ウマが合う、合わない、好き、嫌い、という感情は、自分と違う「他者」と共に生きている中で、必然的に生じるものであるのです。
むしろ、アサーティブに振る舞うことで、これまで問題がない(かのように見えた)関係に「波風が立つようになる」ということは、大いにあることです。
アサーティブなコミュニケーションを取ることは、相手を好きになることでは必ずしもありません。問題がなくなるということでもありません。目の前にいる相手が好きか嫌いか、得意か苦手か、ということについて正直に自分の気持ちを認識したうえで、その、好き・嫌いの感情に振り回されないで、アサーティブに振る舞い、問題解決に取り組んでいける、ということなのです。
相手のことが嫌いだからといって、ぞんざいな態度をとってもいい、バカにしてもいい、ということでは、決してありません。どうしても好きになれなくても、苦手であっても、逃げ腰になることも斜に構えることもなく、誠意をもって率直に、対等にコミュニケーションを取ることを忘れない、ということなのです。
自分がこうなるのは、あなたのことが嫌い(苦手)だからだ、と、自分の行動を相手のせいにして責めることもしません。苦手な相手であっても、向き合って話をするときには、お互いを尊重し、自信をもって、話し合いをあきらめないで続けていこうと、覚悟を決めるということでもあるのです。
最初は苦手でも、話し合いを続けていく中で、相手のことが理解できるようになって、好きになったり、許せたり、ということは、いくらでもあることです。その反対ももちろんあります。人間の感情はそれくらい、不確実で変化するものである、と思って、おつき合いする方が、世界の奥行きは広がっていくのではないでしょうか。
大事なことは、自分の感情に振り回されることなく、反対に感情を殺してしまうこともなく、あきらめずに粘り強く対話を続けていけるようになること。引き続き、チャレンジしていってくださいね。