2012/3/6 汐生の思い

プロであること、人間的であること

今回長期の入院をし、医療の現場の方々の仕事ぶりを目の当たりにして、何度も頭が下がる思いをしました。

医療現場の方々の研修を担当させていただくことも多いので、ある程度想像できてはいましたが、それでも自分が「患者」、つまりケアを受ける側の立場(弱い立場)になると、見えてくるものがずいぶん違ってくるものです。

三交代のため日勤を終えて、仮眠をとってから再び夜勤に入り、夜も朝も変わらず優しい笑顔で接してくれた看護師さんたち。一日中、小走りで動きながらてきぱきと仕事をする様子、患者さんの退院を心から喜んでいる姿、手術の前で緊張している人に「大丈夫ですよ」と力強く声をかける様子、涙している患者さんの肩に優しく手を置いている姿。

そうした現場の看護師さんたちの言葉かけや態度の一つひとつが、心が弱っている患者の心にまっすぐに届くのだと、つくづく思います。改めて、命に係わる現場のスタッフの方々の献身的な仕事ぶりに、心の底から感謝したいと思いました。

もう一つ、今回本当にお世話になったのは、担当医の先生たちでした。この数年の間、ずいぶんたくさんのドクターにお世話になってきたのですが、今回はすばらしいドクターに出会いました。

「ドクター」といえば、どうも権威的で近づきにくくて、話しづらい、というケースがありますよね。上から目線の機械的な話し方で、嫌な印象を持ったり、不信感を抱いたりということも、残念ながらありました。「ここには二度と来ないだろうな」と思いながら、病院を去ったこともあります。しかしながら、この間お世話になった3名のドクターは、本当に対等で誠実で真摯で、そして心の底から患者のためにベストを尽くしてくださっていることが伝わってくる先生方でした。本当に私はラッキーだったなと思います。

特に今回担当医だったT先生は、どんなに仕事が遅くなっても、必ず入院している私を朝晩診に来てくださり、診察時には毎回「お待たせして本当にごめんなさいね」と一言添え、私のわがままな要求に対しては厳しくも愛情をもってきっぱりと「ノー」を言ってくれました。信頼できる先生に出会って、最後までプロセスを診ていただけたことを、今も心から感謝しています。

一人ひとりの患者にしっかりと向き合い、真摯に誠実に対応してくれたドクターに、退院後感謝の手紙を書きました。書きながら、思わず泣いてしまったのですが、それほどまでに、患者であることは傷つきやすく弱い立場なのだなと痛感します。だからこそ、医療の現場では「プロフェッショナル」でありかつ「人間的」であることが求められるのでしょう。

本来「プロフェッショナルである」ということは、私たちの心の持ち方、仕事への向き合い方と同時に、人を深く愛する力を持っていることであるのだと思います。そうした人間としての力を、私自身ももっと高めていきたい。改めて、そんな大きな学びをいただいた体験となりました。