2012/3/19 汐生の思い
こころの力を鍛える
震災から1年がたち、今、この1年を静かに振り返っているところです。今回のような大きな出来事に遭遇した時に、自分の中のいったい何に向き合う必要があるのか、自分のこころの力をどのように鍛えたらいいのか、少しずつ見えてきたように思います。
考えているのは、私たちの次の3つの「こころの力」についてです。
一つ目は、感じる力です。去年の今頃私は、不安と動揺、混乱と怒りの渦に飲み込まれそうになっていました。しかし、自分のネガティブな感情にフタをしていると、他人の言動に腹が立ってくるんですね。何であの人は○○しないのだろう、とんでもないやつだと文句を言いたくなる。でも、相手ではなくて、不安なのは自分なのですよね。つらかったり迷ったりしているのは自分自身なんだと、きちんと自分の不安に向き合う必要がある。そうすることで、むやみに周囲に振り回されなくなります。
二つ目は、感情と思考を分けられる力です。確かに不安や動揺はある。その上で「だから、自分はどうしたいのか」と、自分のアタマに問いかけて考える。感情はコントロールできませんが、自分の考え方や行動はコントロールできます。誰かが言ったから、あの人が○○だからと、自分の言動を他人のせいにすることなく、自分で感じたら、次にちゃんと考えて、そして自分で決めていくこと。言った、あるいは言わなかったことの責任は、自分が覚悟して引き受けること。不安だから黙ることも、不安だから行動を起こすことも、すべて自分の言動の選択肢は自分が持っていることを、忘れないことです。
そして第三に、共感する力です。自分の痛みだけではなく、他者の痛みにも向き合うことのできる力です。しんどい時には「なんで自分ばかりが」と考えがちですが、「つらいのは自分だけではない」と考えてみる。
震災を体験して、誰もがその人なりの痛みを抱えることになりました。私のように都内にいて大きな被害を受けることのなかった人間も、身近な人が実は被災した身内を持っていたり、大切な誰かを失ったりという痛みを抱えている事実を知って言葉を失いました。誰かに対して「どうして?」と腹を立てる前に、「この人も苦しんでいるのかもしれない」と一歩踏み込んで想像してみる。そうすることで、共感と思いやりが生まれるように思うのです。
そんな気づきを今後の自分の指針として、震災後の新しい1年を、丁寧に、生きていきたいと思います。