2012/8/2 講座から
小さなことをやり取りできる関係こそ
アサーティブトレーニングでは、「言いづらいことを上手に伝える」ということで、様々な課題に取り組んでいただきます。とはいえ、言いづらいことの中でも、特に難易度の高いものがあります。それは、ご本人が気づかずやっている「くせ」や、なかなか変えるのが難しい体質に関するようなことです。
例えば、体臭や口臭のような「臭い」に関すること、「音を立ててお茶を飲む」というような「音」に関すること、大きなため息とか舌打ちなどの、本人の身体的な行動の癖のようなものなどです。こうしたことを「アサーティブに」伝えて、相手を否定することなく気づいてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
自分が「迷惑している」というネガティブなメッセージを、関係のできていない相手に突きつけると、「なんで私に?」と相手もカチンとくるものです。それがどんなにアサーティブな言い方であっても、言われた側はなかなか納得いきません。
確かにアサーティブトレーニングでは、「言いづらい」ことを上手に伝えるためのコツを学びます。しかしながら、伝える相手との人間関係の有無によって、伝えられるものと伝えられないものとがあるということは、案外知られていません。
例えば、他部署の同僚が「パワハラに近い」と感じられる言い方で話をしていることに対して、わざわざ相手を呼び出して、「パワハラのような言い方はやめた方がいい」とアサーティブに伝えたとしても、相手が素直に耳を傾けるとは限りません。人間関係ができていないところでアサーティブに伝えたとしても、「大きなお世話」として受け取られてしまう危険性が高いのです。反対に、お互い「話ができる人間関係」ができていれば、「ちょっとさあ、その口調、まずいんじゃないのかな、気をつけた方がいいよ」と、さらっと伝えてこちらの意図を伝えることは可能です。
言いづらいことを伝えるためには、それを伝えられる「人間関係の土台」を丁寧に築くことを怠らないようにしましょう。
そのためには、ネガティブな問題を指摘するだけでなく、「良いこと」「気持ちのいいこと」を伝える機会を逃さないことをお勧めします。例えば、「ありがとう」「この間は、〇〇をしてくれて助かった」「何か手伝おうか」などの、日常の小さなコミュニケーションのキャッチボールを意識して行っておくということです。
そんな「小さな」ことを率直に伝えらえる関係づくりこそを、まずは大事にしてみて下さい。小さなメッセージを日ごろから積み重ねておくことで、大きな問題になった時に言いづらいことでも言える「関係」ができているのです。