2013/2/8 事務局から
アサーティブはパワハラ防止にどのように役立つのか
タイトルのようなお問い合わせをいただくことが、最近多くなりました。
「パワハラ」という言葉が認知されるようになって久しくなります。「パワハラはよくない」「パワハラにならないように」という認識は広がってきたものの、職場の環境整備やマニュアル作りは進んでも、「どうしたらパワハラにならないで部下を指導することができるのか」というコミュニケーションの具体的な方法は、まだまだ知られていないというのが現状ではないでしょうか。
パワハラの原因としては様々に存在しますが、原因のレベルとしては3つに分けられるといいます。一つは「人権侵害に該当するレベル(明らかに差別するなど)」、もう一つは「法律的な知識を知ることで回避できるレベル」、そして最後に「コミュニケーションで解決できるレベル」があるということです。
長年パワハラ等の相談を担当してきた社会労務士のSさんは、「上記①から③のうち、①はほとんどなく、②は2割程度、ほとんどのケースが③にあたる」と言います。要は「言った/言わない」「そんな言い方をしてほしくなかった」など、コミュニケーションがうまく取れないために、「パワハラだ」となってしまうケースです。
以前に比べて組織内では、じっくり人間関係を築いていく時間も余裕も少なくなってきました。「あの人はこんな言い方をするけれど、根はいい人だから」というような、その人なりを知った上でつき合うということは難しくなってきています。人間関係ができていれば、多少きついことを言われても、「確かにそうですね」と受け取ることができるけれども、人間関係ができていない中では、ちょっとしたきつい言葉を言われるとカチンときたり傷ついたりということは、十分あり得ることなのです。
アサーティブは、自分も相手も大切にして、コミュニケーションを取る考え方とスキルです。「相手の権利を侵害しない限りにおいての自己表現」とも言われるように、自他の権利の尊重を土台とした、対等なコミュニケーションのあり方です。その意味では、アサーティブの考え方そのものが、お互いの人権を尊重した関わり合いをしようとするものであり、パワハラとは対極にあるといえるでしょう。
同時に、アサーティブ「トレーニング」の中では、実際に相手を前に自分の意見や思いを言葉に出して伝えたり、相手の言葉を受け取ったりする訓練をします。パワハラを防止するには、個人レベルでは「伝える側」も「受け取る側」も、このようにお互いの人格を尊重したコミュニケーションのスキルを持つことが必要となるでしょう。
相手にとって耳の痛いことを言う場合も、相手を尊重しながら明確に伝えられるスキル。相手の人格を尊重しつつもまずい行為に対してはきちんと「ダメだ」と伝えることのできるスキル。同時に、相手からきついことを言われて「傷つけられた」と受け取る前に、「この人は何を言いたいのだろう」「同意できる部分はないだろうか」と考えてみる姿勢と、問題は何なのか具体的に聞き出すスキルなど。
職場のハラスメントをなくしていくことは、息の長い取り組みになるでしょう。しかし、問題解決に向けて当事者同士が腹を割って話し合い、理解し、和解していくプロセスは大変重要なことではないでしょうか。そういう場面でアサーティブを活用できるように、私たちも日々学んでいきたいと思います。