2013/3/25 事務局から

「違う」ことから始める

アサーティブなコミュニケーションは、お互いのことがよくわかっている会社の同期や近しい友人の間で、というよりも、価値観や考え方の「異なる」人との間でこそ有効に活用できるものです。それは、「正しい自分」v.s.「間違った相手」という対立項から、攻撃的に自己主張をする方法ではなく、立場の違う相手とも対等に話し合って、お互い納得いくまで時間をかけて、一緒に問題を解決するという、静かな自己主張です。

この数年で、組織の中でも様々な立場の人たちが増えてきて、これまでとは考えられないほど多様な人たちが同じ職場で働き、コミュニケーションを取り、人間関係を保ちながらプロジェクトを進行していく時代になってきました。

しかしながら、今でも私たちの意識の中のどこかで、「これくらい、言わなくてもわかって当然」、「言ったんだから、わかるはずでしょ」と思い込んでいる部分があります。「わかって当然」という意識の底には、「だって、みんな同じなんだから」という考え方が潜んでいる気がします。

しかし、これほど多様化してきた職場の中で、「わかって当然」という意識そのものが、お互いの理解を阻害してしまうのではないでしょうか。

肌の色も言葉も文化も同じという国の中で生きていると、どこかで「同じことが当たり前」という意識になるのは当然のことかもしれません。でも、相手と自分とは本来違う人間であり、どんなに言っても話しても分からない部分はあり、だからこそ言葉を尽くして話し合って一緒に問題を解決していく必要があります。私たちが腹をくくって、本気でそこに立つためには、まだまだ時間がかかる気がします。

日本も今、徐々にグローバル化の波にのまれつつあり、これまでとは違う方向に変わっていかなければいけない時代にきています。とはいえ、私たち個々の意識は、一体どの方向に変わっていけばよいのでしょうか。社会のグローバル化に対応することが必要であるとはいえ、実際にどのようなスタンスが必要になるのでしょう。

一つ言えることは、グローバルな時代に生きているからこそ、アサーティブなマインドが役に立つということです。国籍、価値観、バックグラウンドの異なる人とも、対等に、誠実に、率直に、粘り強く話し合いをする姿勢。「同じだから」ではなく、「違うからこそ」、相手を対等な一人の人間として向き合って、一緒に問題解決をしていくスタンス。

話を「聞く」という姿勢としてはすばらしい力を持っている日本の多くの人は、だからこそしっかりと対等に自己主張をして、アサーティブな姿勢で対話ができる力を、これからはつけていきたいものだと思います。

来月の4月12日には、アン・ディクソン氏による『グローバル時代のアサーティブ』が開催されます。どんな話になるのか、私も今からとても楽しみです。ご興味のある方、ぜひご参加ください。