2013/7/22 講座から

心のまなざしは相手に伝わる

伝えるためのスキルは、自分の思いを相手に理解してもらうための重要な要素です。しかし、どんなにロジカルに話しても、"きれいに""スムーズに"伝えてみても、私たちが相手を見ている「こころのまなざし」がアサーティブでなければ、こちらのメッセージは相手の心に届いていきません。

先日担当したある研修の場面で、受講生の一人の方の言葉にハッとしました。

「(ロールプレイをして)アサーティブに伝えてみると、言い方がはたどたどしくなったけど、むしろこちらの誠実さが伝わって、相手の心に届くのがわかった」と。

相手を理屈で説得しようとか、抑え込もうとか思っていると、相手はこちらの心の姿勢を敏感に見抜いて、心に防御線をはってしまうのですよね。でも、相手も自分と同じ、対等な一人の人間だと思って、自分の思いを誠実に伝えてみると、相手が心を開いてこちらのメッセージを受け取ってくれたという事例でした。

私たちは、つい自分のフィルターに通して相手を見てしまうことがあります。
「いい加減な上司」「やる気のない後輩」「困った人」などと、初めから心の中で見下したりバカにしたり、レッテル貼りをしていることはないでしょうか。

そうすると、話し始めの時に、
「〇〇さんって、いつもマイペースですよね」
「君は、いつも物事を否定的にとらえるよね」
「あなたは、いつだって自分の思い通りに物事を進めるじゃない」
などの表現となって現れ、「あなたは悪い」「間違っている」という無言のメッセージとなって相手に伝わっていくのです。私たちの心の中の決めつけやレッテル貼りは、声のトーンや振る舞いから、必ず相手に伝わっていくからです。

話し始める段階で、私たちの姿勢が"闘いモード""説得モード"になって、心のこぶしが「グー」となった姿勢でかかると、進むはずの話し合いも進んで行きません。

そんな時は、二つのことを思い出すといいと思います。
一つは、話し合いのそもそもの目的は何かを思い出すこと。
もう一つは、その問題に取り組む相手は、自分と同じ人間であるということを心に刻むこと、です。

アサーティブでは、ケンカを売らないし、売られたケンカも買いません。

対峙しているのは、"相手"ではなくて"問題"です。どんなに腹が立つ相手であっても、相手という人間に対峙するのではなく、横に座って、一緒に問題に向き合うという協力体制を取るのです。相手は「敵」ではなくて、問題解決の「協力者」。役職や責任の大きさは違っても、よりよい仕事をしていきたい、よいチームを作っていきたいという思いは共通している、ということを、忘れないでいたいものです。

私自身、研修の場で、アサーティブの大事なポイントを何度も教えてもらいます。それを胸に、日々「こころの姿勢を正す」ことを意識していこうと思います。