2014/4/24 汐生の思い

不安をコントロールする

職場での上下関係(上司と部下)、役割上の力関係(親と子)、社会的通念としての上下関係(年齢の差、性別の差)、知識や情報の量の違いなどによる上下関係...。このように、力関係や上下関係が存在する相手と対立するような状況になった時に、アサーティブに振る舞うことのハードルはぐっと高くなります。そんな時でも、相手に敬意を払うことを忘れることなく、誠実に対等に向き合って話し合うためには、何が必要となるのでしょうか。

対立する状況や感情的になりそうな場面で、最初に対処するべきものは、自分自身の「不安」です。心の中に生まれる不安に対して、自分がどのように向き合うかが、その後の私たちの行動を決めてしまうからです。

不安を感じる場面に直面すると、私たちは最もなじんでいる行動パターンを取ります。不安を隠そうとして相手を攻撃するか、不安に飲まれて口をつむぐか、の二つです。そこで、不安である自分の感情をきちんと認めた上で、振る舞いやコミュニケーションをコントロールし、自分も相手も責めない行動を選ぶことが、アサーティブな態度であるといえるでしょう。

意識したいのは、次の二つです。
「ここで反撃しない」、「ここで黙ることはしない」と、自分自身の中で覚悟を決めること。そして、難しい局面でも、誠実に、対等に話をする具体的なスキルを身につけていることです。
勇気とスキルのどちらが欠けても、アサーティブな選択はうまくいきません。

ずいぶん前のことになりますが、障害を持った私の友人が、緊急入院をした時のことです。彼女の容体に対しての医師の指示は、本人が望むものとは正反対のことでした。医師は居丈高な様子で一方的に指示を出し、それに対して私は反発、彼女の家族は言葉を飲み込んで黙るというものでした。

その場で友人は、大変アサーティブな対応をしました。ケンカ腰になることもなく黙ることもなく、静かに落ち着いた声で、相手の顔を見ながらしっかりとコミュニケーションをとったのです。

「〇〇先生のお気持ちはよくわかります。ただ、私としましては△△を望んでおります。ご検討をお願いできないでしょうか」
確か、そんな主張だったように記憶しています。

その時の友人の態度は、今も忘れることができません。医師に比べて自分が"弱い立場" (患者・障がい者)であったとしても、自分自身に対する誇りを失うことなく、相手を責めることもなく、落ち着いて、しっかりと顔を見てコミュニケーションを取ったのです。その結果、ドクターと友人は対等に話し合うことができました。

自分自身に敬意を払い、相手にも同様の敬意を静かに求めると、立場の違いよりも人間としての対等性の方がより鮮明に見えてくるのかもしれません。対等になりづらい関係であっても、相手の立場や価値観を尊重し、相手の人間である部分をしっかりと見据えたうえで、誠心誠意こころを傾けて話をすることで、人間としての対等なかかわりと対話の扉が開くのだということを、その友人の勇気ある行動から私は学ぶことができました。

不安な時こそ、不安から目をそらすことなく、勇気とスキルをもって向き合うこと。それを常に自分自身で意識したいと思います。