2015/2/5 汐生の思い

傷つきやすさは大事なこと

大変ご無沙汰しております。前回のエントリーから、なんと半年以上もたってしまいました。今年度の夏から秋にかけて出張続きで、ゆっくり息をつく暇もなく、2015年の新しい年になってしまいました。

今年の抱負は、「最低月に1回(できたら2回)はブログを更新する!」に、いたします。

今年最初のエントリーは、ちょっと長いものになります。ご了承ください。

先週末に、アサーティブジャパンの会員合宿研修がありました。私は2日目に参加して、「ゆるセクシュアリティ」というテーマで、皆さんと一緒に取り組みました。私自身がとても大切にしてきたテーマを、久しぶりに皆さんと分かち合った1日となりました。

セクシュアリティとアサーティブ、一体どのような関係があるのでしょうか。不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。ここで少しだけ、説明をしてみます。

アサーティブなコミュニケーションのスキルは、今では圧倒的に職場の場面で活用されています。立場の上下がある職場で、職位の上下はあったとしても、お互いを対等に尊重しながら、率直に誠実にコミュニケーションを取っていくことです。職場でのアサーティブは、ある程度"型"を学べばできます。伝え方のノウハウもそろってきて、「こんな風に言葉を選べば、かなりの確率で相手に伝えることができる」というものになってきました。

その一方で、今もなお難易度の高いテーマがあります。身近な関係の中でのアサーティブです。職場のように"役割"でもって話をするのは、ある意味簡単です。しかしながら、役割からではなく「はだかの自分」、つまり「素の自分」でもって、自分も相手も尊重しながらアサーティブに振る舞うというのは、とってもとっても難しい。それは、相手との関係の中にある、言葉にならない思い、蓋をしてしまった過去、見ないふりをしてきた怒りや悲しみにまで触れてしまうような、傷つきやすいテーマが多く隠れているからです。

傷つきやすく、無防備であることを、英語では、vulnerableと言います。この言葉は、セクシュアリティのテーマを語るときに、とても言い当てていると思います。

セクシュアリティでカバーするものは、多岐にわたります。自分の体のこと、自分自身の感情、年齢のこと、年を重ねていくことの不安、パートナーとの関係のあり方、変化を受け入れること、子どもを持つのか持たないかに係ること、どんな人を好きになるのか、どんな生き方を選ぶのか...。まさに、私たちの"生き方"と"自己信頼"そのものに真正面から向き合うことばかりです。

同時に、あまりにも個的な領域であるにも関わらず、一旦外に出ると、容赦のない評価や序列のまなざしが向けられてしまうのも、このテーマの特徴です。体のこと一つとっても、「何が良い/悪い」「美しい/醜い」という評価に、あっという間にさらされてしまう。

自分にとって、とても、とても大事なことなのに、それを言葉にすることは、批判にさらされるリスクが高く、しかも傷つきやすい(vulnerable)ものばかり。だから、誰にも言わないで、心の中にしまっておく、隠しておく、ないふりをする、平気なふりをしてしまうのです。社会の"普通である"ことのプレッシャーの中で、そこから外れたとたんに、すぐに自分と他者の間に上下関係が出来てしまうことになる。だから、語ることも取り組むことも難しくなるのですね。

アサーティブは、そこの部分を避けて通ることなく、向き合います。アサーティブの土台にある"自己信頼"や"内側の力"は、外にある社会的な上下の価値観を取り入れて自分と他人を比べてしまいそうな時にも、その"はしご"を相対化し、他者と本当の意味で対等にかかわる力を取り戻すことにあります。

そのためには、自分の中の「傷つきやすい(vulnerable)」部分について、評価したり比較したりするのではない、安全な安心な場所で、自分が抱えてきた悲しみや怒り、恐れや不安、喜びについて、語り合えることが必要になります。そういう場を持たないと、永遠に大切で傷つきやすい自分の一部を、他者と分かち合うことができなくなってしまうのです。

言葉にすることで初めて、私たちは自分の中の"はしご"を相対化することができます。相対化することで初めて、「自分もつらかった」、と同時に「あなたもつらい体験をしたんだね」と、共感する地平に立つことができ、必要なことはもう一度大切に扱い、必要でなくなったものは手放す、ことができるのではないでしょうか。

話し始めると止まらなくなるこのテーマですが、皆さん深いところで心を開き、語り合い、分かち合い、自分の"今"と"過去"を振り返りながら、やっぱり前向きに生きて行こうと思うことのできた1日となりました。

私自身にとっても、自分の人生の中で何を大切に生きていきたいのかを、美しい自然の中で、改めて考える時間となりました。ご参加の皆さま、素敵な時間をありがとうございました。