2015/2/18 汐生の思い

ハラスメント防止のためのコミュニケーションを

昨年の夏以降、私は「ハラスメント予防」という目的でのアサーティブ研修で走り回っておりました。これまでも、社内のコミュニケーションの改善を目的とした研修のご依頼は多くあったのですが、この1,2年はハラスメントの防止、メンタルヘルス予防という目的で、日常のコミュニケーションのあり方を変えていかなければと考える組織が多くなってきたように思います。

パワハラ・セクハラの定義や「何がダメか」は、社労士さんや弁護士さんのお話を聞いて理解した。しかし、パワハラという言葉が知られるようになればなるほど、別の悩みが出てきたというのです。

「パワハラだと思われたら困るので、厳しいことが言えない。はっきり言えずに遠回しになってしまう」
「部下の言動がパワハラに該当すると思うのだが、どう伝えれば本人に理解してもらえるだろうか」

ある企業のコンプライアンス担当は、ハラスメント防止のための社内ポスターを作成しました。
その文言は、
「ハラスメント、いじめには、見て見ぬ振りをせず、声かけを!」
「ひとりで悩まず、まず相談を!」
とあります。

「まず相談を!」という文言はわかりやすく、実際に相談窓口を設置し、相談ルートを明確にしているので、どう行動すればよくわかります。

ところが、「見て見ぬ振りをせず、声かけを!」とは、一体全体どんな"声かけ"をすればよいのでしょうか。いじめをしている人に「それはよくないよ」と声をかけることは、仕事をしている現場で、本当にできることなのでしょうか。

ハラスメントが原因で自殺者を出してしまったある組織は、パワハラが行われている状況を、20名以上の人が見ていたそうです。確かにハラスメントを起こす本人は問題であり、厳重な対処が必要となります。しかし、実際にそれを見ていた人たちが、「見て見ぬ振りをせず、声かけを」することが難しかったからこそ、問題を止められなかったとも言えるでしょう。

パワハラは職場の力関係を背景に行われます。相手の「上の力」に介入するのは、とてもとても難しい。下手をすれば今度は自分がターゲットになってしまうかも、どうせ言っても何も変わらない、あの人はそんな人だ、という無力感が、職場全体でコミュニケーションの意欲さえもなくしてしまう。だからこそ、介入のための"伝え方"には工夫が必要になるのです。

アサーティブでは、まずは「伝える側」の訓練から始めます。ハラスメントにならない、モノの言い方を、しっかり訓練します。
次に、ハラスメントに当たる言動をしている他者に、きちんと介入する訓練も行います。

時間があれば行いたいのは、「言われる側」の対処の仕方です。きつい言葉を言われたから、即、パワハラだ、というのではなく、相手の言葉の裏にあるメッセージを受け止め、問題解決の方向に向かって行ける力をつける訓練です。

人間関係が複雑になればなるほど、言葉が相手を傷つけるリスクも高くなっていきます。だからこそ、言葉と同時に心(マインド)でも、自分も相手も尊重できる土台を持ちながら、人間関係を築いていけるようになりたいですね。