2020/4/24 汐生の思い
自分が変えられることに集中する
メンタルヘルスの電話相談サポートを行っている知人から、メールが来ました。彼女は、毎日出勤して電話対応をしています。相談の中で多いのは、感染の不安と合わせて、身近な家族や同僚とのコミュニケーション上のストレス。自粛や衛生観をめぐりお互いの価値観の違いが浮き彫りになってしまい、コミュニケーションがかみ合わない。その結果、必要以上のストレスを抱えてしまうことをどうすれば避けることができるのか、私自身も日々、葛藤しているところです。
実はつい先日も、家族のちょっとした一言で感情的に反応してしまい、大きな喧嘩になりました。ドアをバタン!と閉めて外に出て、「私だって、家族みんなが安心して暮らせるように、こんなに…こんなに…毎日…頑張っているのにぃぃぃ!」と、心の中のつぶやきを言葉にしたとき、ああ、私はまた自分の不安に飲み込まれて攻撃的になっていたな、と気づきました。
自分の不安がぐるぐる頭を回り始めると、相手も同じくらい不安かもしれない、という相手の状況に思いをはせることをやめてしまいます。相手よりも、まずは自分のこの不安をなんとかしたい、自分が不安なのは周りのせいだと、あっという間にハリネズミ状態になる。なんでわからないのよ、こっちだって大変なのに!と、攻撃姿勢全開になってしまう。
その場で、その時、思いっきり反応してしまった自分を反省することしきり。その時は、いったん時間を置くことにしました。夕方になると怒りも収まり家族と和解しましたが、自分がいかに、ぎりぎりのところで持ちこたえていたかを、改めて認識するきっかけとなりました。
そこで、ふと先日会員さんから聞いた話を思い出しました。
IT企業に勤務する彼(会員さん)のチームに、Aさんというとてもまじめなメンバーがいます。Aさんはチームの中でも「社内で作業する」担当だったので、他のメンバーが在宅勤務になっている間に、一人、毎日のように出勤していたそうです。
その人の負荷が重くなっているのではないかと思った彼は、ある時「Aさん、本当はどうしたいのかな?」と声をかけたそうです。
Aさんは最初黙っていたのですが、しばらくして「週1回でも、誰かに替わってもらいたい。わたし一人だけだと、しんどくて」と答えました。「じゃ、チームにその話、してみない?」と彼が話した所、翌週Aさんは、チームのリーダーに自分の気持ちを伝えたそうです。
「一人はしんどいので、週に1日でも誰か替わってもらえませんか」と。
それまでチームのメンバーは、Aさんが何も言わなかったので、介入しない方がよいだろうと、そっとしておいたそうです。でも、Aさんからのその言葉でチームリーダが動き、メンバーで話し合い、「じゃあ、分担してやってみよう」というところまで話が進んだ、ということでした。
今の厳しい状況の中で、誰もが必死で日常を生きています。その中には必要以上の責任を抱えて、「自分がやるしかない」と思っている人もいるかもしれません。
Aさんも、「こんなこと、望んではいけない」、「自分が頑張らなければ」と思い込んでいたのかもしれません。でも、「ほんとうは、どうしたいの?」という問いかけをもらって、自分の望みを言葉にすることができたのでした。
自分の気持ちを、正直に言葉にすること。
それはアサーティブの第一歩ですが、
その上で、
自分の望みを、率直に、誠実に、「言葉に」していくことは
私たちに「どんな時でも自分には選択肢がある」ということを思い出させてくれます。
現在わたしは、アサーティブジャパンの事務所に、毎日ひとりで出勤しています。在宅勤務のメンバーが作業できるように、朝PCを立ち上げ、たまにかかってくる電話の応対をしています。事務所から徒歩圏内に住んでいること、代表なんだから「やらねば」という責任感から自らに課した業務です。
でも先のAさんのストーリーを聞いて、はっとしました。私もどこかで「自分がやらねば」と思って自分を縛ってはいなかったか。自分の望みを消して、どこかで自分が犠牲者になって自らを憐れみ、「仕方ないよね」と思って無力になってはいなかったか。
私は、何を望んでいるのだろうか。
私は、どうしたいんだろうか。
それを自分自身に聞いてみました。
気づいたのは、私には、①自分が引き受けることと、②周りにヘルプを求めることの、少なくとも2つの選択肢がある、という事実です。「やらねばならない」ではなく、「わたしは、やりたいから選んでいるんだ」ということ。そのことが分かってから、変えられない状況に怒ることも、自分は犠牲者だと思って無力感にとらわれることもなくなりました。
現状には、変えられないことはたくさんあります。コロナウイルスが存在すること、全世界に広がっていること、仕事の機会が失われていること(アサーティブジャパンも3月から収入がゼロですので…)、今は動かずStay Homeでいることがベストなこと。
変えられないことを変えようとしても、何も動きません。変わらない相手や現状に腹を立てると、攻撃的になるか、あきらめて無力になるだけ。そうではなくて、変えられることに意識を集中する。できることを、半径5メートルくらいの範囲からやってみる。
それを、常に忘れないでいたいと思います。
自分が感じる不安や恐れの感情を変えることは、できません。
でも、その感情を言語化することは、できます。
不安な気持ちを、どう表現するか、
そして、どう行動するかは、選択することができるのです。
最後に、一つのサイトをご紹介します。
とても整理されているので、私も何度も読み返しています。
日本赤十字社で紹介されています。
私たちができることを意識して、アサーティブな行動を「選択する」。
負のスパイラルを、広げない。
それを意識して、今日も過ごしていきたいと思います。