2009/8/14 谷澤久美子

フランス映画『夏時間の庭』

こんにちは!アサーティブジャパン認定講師、映画好きの谷澤久美子(くみ)です。

フランス映画『夏時間の庭』を見てきました。

画家だった大叔父のアトリエに1人で暮らしていた母親が突然亡くなります。
3人の子供たちにはパリ郊外の広大な屋敷と庭、貴重な美術品コレクションが遺産として残されました。
母親は子どもたちが処分してもいいように、リストなどを作り準備もしてありました。
長男(フランス在住/経済学者)と長女(ニューヨーク在住/アクセサリーのデザイナー)と次男(北京在住/スポーツシューズ工場の技術監督)は、話し合います。

長男は「家族の絆でもある家を別荘のように使おう。そしてコレクションは孫たちに託そう」と話します。次男は、とても言いにくそうに、「実は北京に家を買うことにした。子どもたちにもお金がかかる。決定したことには従うつもりでいるけれど、できれば処分が希望だ」と話し、長女は「今まで言ってなかったけど、結婚することになった。2人の基盤はNYにある。私はもうフランスを必要としていない。決定には従うけど、処分したい」と話すのです。

個人の権利を大切にされているフランス。私はここから修羅場があるのかな?激しい言葉のやりとりがあったりして、いやあ、どうなるんだろう、この財産・・・と息を飲んで見ていたのです。しかし、そうではありませんでした。

長男は2人の考えを聴き、それを受け入れ、その後自分の部屋に戻り真っ暗の中でベットに腰掛け、ひとり涙を流します。
誰も誰かを責めず、誰も声高に主張するわけではない、他者を思いやりながらも様々な感情がうずまいているそのやりとりが、私には、とてもしみじみとせつなく感じられ、
見終わったあとも心に残るシーンとなりました。

私には考えがある。しかし今は言わない、という選択。それもアサーティブネスです。
思い出の詰まった家への愛着と、経済的に厳しい現実との葛藤の中で、それぞれがそれぞれの責任でもって選択したこと。それを美しいと思いました。

ラストシーンは長男の娘のエピソード。フレンチポップスが好きで警察のお世話にもなったことのあるちょっとチャラめな女の子も、実はこの家と祖母が大好きで、でも、そのことを親には言えなかった、そんな面をもつ女の子。祖母をしのんで流す涙が素敵でした。

natujikann.jpgのサムネール画像