2017/6/29 桜沢信江

後悔しているたった一つのこと

こんにちは。アサーティブジャパン認定講師の桜沢信江です。

先日、私の友人のお父様Aさんのお話を聴く機会がありました。Aさんは90歳に近い方ですが、とてもお元気で、明朗闊達にお話をされるとても素敵な方。(ご本人に了承を得て書いています)

「長い人生の中には、壮絶な戦争体験もあったし、辛いことも苦しいこともたくさんあったけれど、それを乗り越えてきて今がある、自分にも誇りをもっているし周囲にも感謝している、ただ、非常に後悔していることが一つあるのだ。聴いてくれますか?」

と聞かれ、ぜひお伺いしたいと答えると、

「それは、パートナーが元気なうちに自分の気持ちをきちんと言葉にして伝えなかったこと」

とAさんはぽつりぽつりと話し始めてくださいました。

「感謝の気持ち、ありがとうの言葉をパートナーに伝えてこなかった。60年以上も連れ添ってきて本当にありがとうと、どうしてもっと早くに何度も伝えなかったのだろう」

「元気だったパートナーが突然、この世からいなくなってしまった。時代背景もあり、言わなくてもわかってくれているだろうと思って言わなかったことが、今になってこんなにも後悔するなんて」

と涙を流しておられました。
そして、今は毎日仏壇の前で一緒にお茶を飲みながら感謝の気持ちを伝え続けているとのことでした。

Aさんのお話を伺って、私は以前読んだ、緩和ケアに数年携わってきたオーストラリアの看護師の話を思い出しました。

人生最後の時を過ごす患者さんたちが死の間際に人生を振り返る時、後悔を語ることが多く、そのベスト3に「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てばよかった」ということがあるのだそうです。

Aさんと患者さんでは立場は違いますが、人は歳を重ねるにつれて、自分の気持ちを言葉にできなかった場面の記憶が蘇り、後悔が出てくるものなんだなぁと感じました。

凛とした中に穏やかさ、優しさも兼ね備えていらっしゃるAさん。
Aさんの言葉に寄り添いながら、一緒に涙しながら、私もできるだけ誠実な気持ちを言葉にして大切な人たちに伝えていこう、日々アサーティブであろう、と改めて思わせていただけた、とても優しい時間となりました。