アサーティブを学ぶと、私たちは実際に使ってみたくなります。「あの人にこれを言ってみよう」、「アサーティブに的をしぼって具体的に伝えてみよう」とチャレンジしたくなります。
ところが。実際に言ってみると思っていたよりも上手にできない。講座でロールプレイを行ったほどにはうまく相手に伝わっていかない。「私がこんなにアサーティブに伝えているのに、どうしてわかってくれないのだろうか」。今度は、その場で「わかった」と言わない相手に腹が立ったり、伝えられない自分にがっかりしたり。
ここで一つ覚えておいていただきたいことがあります。アサーティブに「言ってみよう」と思う相手というのは、人間関係が複雑であったり、ちょっとぎくしゃくしていたり、これまでも「なかなか伝わらない」という経験をしてきた人たちです。そうした人間関係で、「すぐに」「わかってもらえる」と思わないこと。こちらの伝え方をアサーティブに変えれば一気に関係が改善する、ということは、こと感情を持つ人間の間ではうまくいきません。
機械には感情がありませんので、「すぐに」「直す」ということができますが、人間関係の変化には時間がかかります。むしろ、時間をかけるほうがうまくいく。自分がアサーティブになって心の準備ができたからといって、相手も同じくらい準備ができていることなどないわけで、その意味では「時間をかけてお互い徐々に変わっていく」くらいの余裕を持っていった方が、ストレスをためないで済むかもしれません。
アサーティブの11のポイントというのが、第9版の『Your Perfect Right』に紹介されています。その最後に、「As persistent as necessary to achieve one's goals」とあります。「Persistent」というのは、ねばり強く、という意味です。ねばり強く、あきらめないで、焦らないで、アサーティブであり続けようとする。1回アサーティブに言って撃沈したらやめてしまうのでなく、2回、3回、4回と続けてみる。あなたの「ねばり強さ」によって、相手は「この人は本気だ」と理解するようになり、「それじゃあ、考えてみようかな」という風に変わってくるのです。
以前ある方が、上司から批判をされた時、これまではいつも下を向いて黙っていたが、ある時から上司の顔をしっかりと見て「そうですか。わかりました」と毎回対応するようになったら、半年くらいたってから徐々にその批判がなくなってきて、ある時廊下でその上司に、「最近、よくがんばっているな」とほめられるようになった、と話していました。
小さなことかもしれません。でも「続けること」。ねばり強く、あきらめないこと。ぐらぐらしないで凛としていること。
そうした姿勢そのものが、関係をより対等なものに変えていくのだと思います。