誰かを注意したり批判をしたりすることが、「相手への人格攻撃」のような言い方になってしまうと、コミュニケーションはうまくいきません。相手を「人格を持った一人の人間」として尊重しながら、行動や振る舞いについて注意するというのは、最もアサーティブなスキルの必要な部分であり、私たちがネガティブなメッセージを伝えるときにぜひとも意識しておきたい部分です。
誰かに腹を立てて「何か言ってやりたい」と思う時、自分の中でいくつか"注意のポイント"を設定しておくと、攻撃的な言い方を避けることができます。
私が気をつけているのは次の3つです。
一つは、口をひらく「前に」、自分に「正直に」問いかけてみることです。
これを言いたいのはなぜなのか。相手に非を認めさせて「勝った!」と思いたいのか、自分の正当性を証明したいからなのか。「自分がすっきりするため」が理由である場合は、伝えることをいったん保留します。なぜならば、このようなスタンスで話し始めると、絶対に、どっちが正しいどっちが間違っているという勝ち負けの土俵に乗ってしまい、お互い納得のいくゴールに到達できないからです。
次に考えるのは、「あなたが〇〇するからダメじゃん」「いつもあなたが△△だから困るのよ」と、頭の中が相手を責める言葉のオンパレードになっていたら、そこから次を考えます。「あなたが〇〇することで、本当に困ることは何なのか」、「お互いにとって本当に問題になるのは何か」と、「相手の行動」ではなく「本当の問題」を考えてみることです。
注意や批判をする目的は、起こっている問題を話し合って一緒に解決していくということのはず。だから、「こんな具体的な問題が起きてしまい、これはお互いにとって困った事態だと思うんだよね」ということを合意できれば、責めモードから問題解決モードに切り替えることができます。
最後に、「相手への理解の言葉」と「自分の責任」を、必ず考えて言葉として伝えることです。犯人探しではなく問題解決にしていくための、本当に大事なアプローチです。
例えば、
「あなたが、よかれと思ってやってくれたのはわかっているのだけれど」
「確かにそういうやり方でも、うまくいくことはあるよね」
という相手への理解やねぎらいの言葉。
と同時に、自分の責任も認めます。痛いけれども、認めることで話し合いがぐっと対等に近づくのです。
「私も確かに言い過ぎたよね。ごめんね」
「もっと早く相談しておくべきだったよね」
注意や批判は、人を攻撃するためのものではなく、問題を一緒に解決するためのコミュニケーション。そうしたことをちょっと意識するだけで、伝わり方がぐっと変わってくるのではないでしょうか。