事例1:
若手社員の主張力を向上
〜I社の場合〜
アサーティブトレーニングで心理的安全性を形成。
若手社員が気がねなくコミュニケーションを取れる組織風土に。
I社では、若手のコミュニケーション不足とメンタル不全が課題となっていました。人事担当者の方からのご相談により、入社半年目のフォローとしてアサーティブ研修を導入しました。プログラムの1日目はこれまでの業務の振り返りと課題の抽出、2日目に今後上司や先輩とどのようにコミュニケーションを取るのかの実践トレーニングを行い、今後の具体的なアクションプランを作りました。
- 業態:
- 小売販売の営業、商品開発、管理部門
- 導入研修:
- アサーティブコミュニケーション研修(例:半日研修)
- 対象人数:
- 入社5年目までの若手社員150名
若手のコミュニケーション能力が低下している
ここ数年にわたり、若手の主張力が落ちてきたように思います。わからないことをそのままにする、指摘するまで報告してこない、すぐに答えを聞きたがり自分で考えようとしない、試行錯誤を避けて主体的に動こうとしない、などの課題が顕著になってきました。
SNSなどの文字コミュニケーションは得意なはずなのに、実際に対面してやり取りするとなると、上司や先輩とどのように関わって良いかわからない、あるいは、仕事を依頼されても、「ムリです」と一言で返してしまい、相手の反感を買ってしまうなど。若手が適切に主張できずに抱え込む、キレて一方的な言い方になるなどの結果、上司や先輩と人間関係を上手く作ることができずにメンタル不全に陥ったり、仕事を辞めてしまうということも見られました。
そんな若手社員に、相手を尊重しながら自分の考えを主張する「スキル」があるということを知ってもらい、スキルとして身につけることで、自分の気持ちや悩みを抱え込んでしまうことが少なくなるのではないかと考えました。なるべく実践的なコミュニケーション研修を探していました。
上司に率直に相談する、わからないことをそのままにしない
新入社員には入社半年後、若手社員には上半期に研修が実施されました。
この時期の新入社員の課題としては、一度教えてもらったことがわからないとき、「〇〇がわからない」「困っているので相談したい」が伝えられない、どこまで理解していてどこが分からないのかを適切に説明できない、「もう大丈夫だよね」と言われて与えられた仕事に対して「今の状況では難しい」ということを伝えられない、などです。
そうした状況に対して、研修では、自分の状況を客観的かつ具体的に説明して、自分の意見や気持ち、提案を率直に伝える、ということをトレーニングしながら学ぶというプログラムを実施しました。
半日(4時間)プログラムは、下記の構成になっています。
1.アサーティブの概論
アサーティブなコミュニケーションの活用法と自身の振り返り(それぞれが抱えるコミュニケーションの課題認識)。
2.具体的な事例を使っての演習
演習のテーマを「上司/先輩と率直に話す・相談する・提案する」に設定し、I社の若手社員が実際に経験したケースから、演習で使う事例をカスタマイズ。
「忙しい上司に自分が分からないことを相談する」「上司から依頼された業務に関して、何ができて何ができないかを説明する」などの事例を、受講生が部下と上司役になってロールプレイを実施。
3.小グループでの演習と、まとめ、アクションプラン
小グループに別れ、各自が、これまで実際に起こった事例を用いてロールプレイ。グループ内で相互フィードバックを行う。その後、ロールプレイのまとめと、実践に活かしていくためのアクションプランを作成。
「具体的な方法がわかれば、若手は伸びる」
若手/新入社員は元気で前向きで、やる気は十分にあります。そして「コミュニケーションを取らなければならない」という意識も高い。つまり、“必要条件”としてはそろっています。従って“十分条件”として、「実際に伝えるやり方を知る」ことが、彼らの助けになるのです。
忙しい上司に、どのようなセリフで声をかけたら良いのか、自分の状況をどのような言葉で説明したらよいのか、率直な話し方とは具体的にどのような伝え方なのか。それを身につけることは、若手にとっては非常に重要なことのようでした。具体的な「方法」と、実際に伝える「勇気」、そしてトレーニングをくり返すことでついてくる「自信」。同世代が多いからこそ、お互いに励まし合い、勇気づけあって演習に取り組んでいました。研修後も声をかけやすい環境と関係も同時に作ることができました。
年齢も価値観もバックグラウンドも違う上司や先輩と、相手を尊重しながらも自分の意見をしっかりと伝える方法としてのアサーティブコミュニケーション。頭で理解することが「必要条件」であれば、本当に動けるようになるスキルは「十分条件」なのだと思います。知識と体験の両輪があることで、若手は伸びていくのではないでしょうか。