事例4:
組織内ハラスメントを防ぐ
〜K社の場合〜
日常での部下との関わり方を変えることで、ハラスメントの芽をつむ
管理職研修の一環として「ハラスメントとは何か」「何がNGか」については理解したが、「ではどうしたらいいのか」がわからない、と、社内コンプライアンス担当者よりご相談がありました。ハラスメントを怖れるがあまり部下の注意が遠回しになってしまう。そうではなくて、部下を尊重しながらも言うべきことははっきり伝える方法として、アサーティブな指導法をご紹介しました。全社の管理職を対象に、演習を含んだ2時間研修を担当しました。
- 業態:
- 運輸・通信業
- 導入研修:
- ハラスメント研修(2時間研修)
- 対象人数:
- 全管理職 270名
「何がNGか」はわかる。「ではどうしたらよいか」がわからない
K社では、すでに8年間にわたりコンプライアンス部門が「ハラスメント防止」を目的とした研修を実施してきました。社内のハラスメント防止対策によって、「ハラスメントとは何か」「何がNGか」については理解し「意識化」という点で効果が現れてきた半面、部下指導においてハラスメントになるのではないかと怖れ、「指導が遠回しな言い方になってしまう」「部下に反発されるくらいだったら自分で引き取った方が早い」など、部下との関わり方やコミュニケーションが難しくなっているという声も聞かれるようになりました。
また、8年間にわたり「ハラスメント防止」というテーマで、法的な側面や社内制度に関する業務知識研修が中心であったため、管理職層からは「もういい加減、固い話は勘弁してほしい」という声も上がっており、コンプライアンス部門としても、もう少し柔らかく、かつ参加しやすい研修はないだろうかと探していました。
ハラスメントにならない、アサーティブな伝え方をすることで、部下との関係を変えることはできないだろうか。「上司から一方的に言われる」「上司は自分のことをわかっていない」と部下が感じることのないように、日常の中で部下とのより良い関係を作ることはできないか。そうした課題を解決するために、「アサーティブな伝え方、関わり方」を、短時間の研修会として導入することになりました。
ハラスメントを起こさない / 起こさせない、適切な指導法を知る
研修は座学の形態にはなりますが、演習を盛り込んだ2時間研修です。アサーティブなコミュニケーションが1回の研修で身につくことはありません。短時間であるからこそ、くり返しトレーニングを行い、思い出す機会を持つということが、効果を持続させる秘訣となります。
AJでは、毎年1回の研修を2回から3回実施することを推奨し、構成は以下のようになっています。
- 1回目:「伝え方」中心のトレーニング。
- 2回目:「聴き方」「伝え方」のトレーニング。
- 3回目:自身のケースを使ったトレーニング。
2時間プログラムとはいえ、レクチャー部分は前半のみで、後半の演習部分に主軸が置かれます。
以下は、実際の研修内容の流れになります。
10:00-11:00 イントロダクション / 講義
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- イントロダクション
- 自己紹介 / プログラムの説明
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- 近年のコミュニケーションについて
- 対人間関係をめぐるコミュニケーションの重要性 / 信頼関係を築くためのコミュニケーションの重要性
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- 「アサーティブ」の概要を知る
- アサーティブとは何か
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- 自分のコミュニケーションのパターンを知る
- 自分のコミュニケーションを振り返る(攻撃型 / 受け身型 / 作為型)
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- アサーティブを伝えるポイントとは
- アサーティブを支えるマインド
11:00-12:00 実践演習(ロールプレイ)
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- 実践・演習
- 現場でよく起こる事例を通じて、伝え方のポイントを学ぶ / ハラスメントを日常の中で予防しながら、伝えるべきことはしっかり伝えるトレーニング / 現場で即実践できるように、実習を繰り返す
- 質疑応答
- 終了
毎年のプログラムで扱う事例については、以下の内容を中心に取り組んでもらいました。
- 1年目の事例:「管理職としてハラスメントを起こさない/ 部下にハラスメントを起こさせない」演習(主張力のアップ)
- 2年目の事例:「部下からの話を理解して、ハラスメントにならないように対応する」演習(対応力のアップ)
- 3年目の事例:ビデオを使った多様なケースの対応と自身の事例の検討(対応力の強化)
K社で実際にあった過去のケースを参考にして、管理職に共通する「あるある事例」をカスタマイズして作成し、2つの事例に取り組んでもらいました。
また、DVDによる学習も実施しています。
『アサーティブな対応で防ぐパワーハラスメント』(企画・制作 株式会社ドラコ)の制作にアサーティブジャパンが協力しましたので、こちらのビデオを利用した研修も実施しています。
DVDでの取り扱い事例
- 部下のパワハラを注意する
- ほめ方がわからない
- 呼び捨てを注意する
- 人間関係の改善のために
- パワハラ相談を受けたとき
- 適切な指導とは
また、パワハラ防止だけでなく、セクシャルハラスメント防止にむけた内容もございます。
上記のDVDは販売も行っております。こちらからお問い合わせ・お申し込みいただけます。
「部下との信頼関係を築くことが、ハラスメントの防止につながる」
現場で業務を担当する社員一人ひとりが、異常やミスを発見しそれをはっきりと伝える力をもっていることが、コンプライアンス経営につながっていきます。そのためにも、日頃から管理職として部下との関わりを意識して、部下から早めに相談してもらえる信頼関係を築くことこそが、問題の早期解決とハラスメントのない職場を作る力になるのです。
管理職が「自分の時代はこうだった」と、過去のやり方に縛られていては何も変わりません。変わるのは自分自身。自分の伝え方や部下との向き合い方も含めて、変わろうと日々努力すること。そうした姿勢があることが、実は部下との関わりを改善し、お互いに協力し合える関係を作っていくことになるのでしょう。
部下に対する指導のスキルや言葉も確かに重要ですが、言葉を支える心の持ちようこそをアサーティブにしていくこと。それを習慣づけていくために、次年度も引き続き、アサーティブな伝え方研修を導入していただく予定です。