事例2:
新人社員への関わり方を改善
〜N社の場合〜
OJTとの関わりを通して、新人に社会人としてのイロハを学び取らせる。
OJT自身が、若手育成を通じて成長する。
新人を育成するOJTが、新人との効果的な“関わり方”を学び、上司や先輩を巻き込みながら新人を育成していく力をつける。そのためのコミュニケーションスキルとして、アサーティブコミュニケーション研修を導入しました。一方的・威圧的な指導でもなく、優しすぎて伝わらない指導でもなく、新人を尊重しながらも「言うべきことは言う」ためのトレーニングを行う中で、新人とのアサーティブな関わり方を身につけました。その後、自信をもって新人育成に関わることができたという声をいただいています。
- 業態:
- 保険金融業
- 導入研修:
- アサーティブコミュニケーション研修(1日研修)
- 対象人数:
- 新人育成担当者 240名
新人を効果的に育成する関わり方が分からない
N社では新入社員の底上げと、新人育成に直接かかわるOJT機能の強化をすることで、新人が自律的、かつ主体的に動き成長する組織を作ることを目標にあげていました。新入社員が年々変化している事実を受け止めて、新人に直接的に関わるOJTのみならず、周囲の先輩や上司も新人との関わり方を変えていく必要があります。組織の文化に身を置きながら徐々に仕事を身につけさせるような、従来の新人育成のやり方ではなく、きめ細やかにフォローをし、タイムリーに指導を行いながら、新人が継続して成長するような育成方法が求められるようになりました。
とはいえ、価値観が自分と大きく違う新人を前にして、戸惑う人、キレ気味になってしまう人、反対に辞められたら困ると腫れ物に触るように接してしまう人など、新人育成という共通の目的を前にして関わり方に戸惑い、迷うOJTも少なくありません。最初のうちは手取り足取りでフォローをしていても、半年くらい経過すると(新人自身の個性もありますが)、成長の度合いは大きく異なってしまいます。
そのため、研修では、最近の新入社員の一般的な傾向についての理解を深め、従来のやり方では問題が解決されない課題について話し合いました。その上で、新入社員の育成のためにはOJTだけでなく、OJTが率先して新人育成のために周囲を巻き込んでいく力が必要であることを認識し、具体的な“関わりのコミュニケーションスキル”を身につけるために、アサーティブトレーニング研修の導入ということになりました。
優しすぎず、厳しすぎず、新人と真摯に向き合って関わり合う姿勢
テーマとしては、「新人育成のためのOJTの巻き込み力アップ」。OJTが新人への関わり方を改善すると同時に、周囲の先輩や上司に主体的に関わって、新人育成に協力してもらえるようになるためのコミュニケーションスキルということで、アサーティブトレーニングプログラムを作成しました。
1日(7時間)プログラムは、下記の構成になっています。
1.アサーティブの概論:自身のコミュニケーションの課題の認識とアサーティブの理解
2.検討事例を使っての演習
3.各自の課題抽出と整理・ロールプレイ、まとめ、アクションプランの作成
8:40-12:00 講義 / 演習
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- オリエンテーション(グループワーク)
- 自己紹介・周囲を巻き込むための必要なコミュニケーションとは
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- 自分のコミュニケーションを振り返る(個人ワーク・ペアワーク)
- 特徴的なパターンを知る / 自らの特徴を知る / アサーティブなコミュニケーションの特徴を知り実現を考える
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- 事例検討 ロールプレイ体験(ペア / グループワーク)
- 具体的な事例を通じてアサーティブ・コミュニケーションを体験する
- 1: 「新入社員育成をめぐる上司との対立を解消する」/ 2: 「先輩に協力を仰ぐ」/ 3: 「新入社員とのコミュニケーションギャップを解消する」
12:00-13:00 休憩
13:00-17:00 実践演習(ロールプレイ)
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- 各自の課題抽出と整理
- 課題の抽出と整理、伝え方の説明 / 交渉に向けての各自の準備
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- グループでのロールプレイ実践
- 各自の事例を使って、グループ内で全員が演習
- グループでの成果発表
- アクションプラン作成・質疑応答
- まとめ・終了
本研修では7時間の終日研修であったこともあり、受講生一人ひとりの個別のケースを、複数の講師のサポートのもとにロールプレイで取り組むことができました。
上司との課題を抱えている人、抱え込みがちの新人とのかかわりに悩む人など、受講生の課題は千差万別でしたが、グループの中で悩みを出し合い、個々のロールプレイ課題に対して相互でフィードバックを出し合うなど、協力的な雰囲気で研修は進んでいきました。
年齢や経験年数は異なっても、OJTという役割は共通しているので、お互いに協力しながらそれぞれのコミュニケーションの課題に取り組むことができたと思います。
「新人育成においては、誰もが対等な関係」
新人育成という目的の前に、OJTも上司も対等です。これまでは、「上司から言われたことは『はい』としか言えなかった」「忙しそうな先輩に、新人育成の協力を求めることが難しかった」などと抱え込みがちだったOJTが、周囲とも対等に関わることができることで、より効果的な新人育成を進めていくことができるようになると思います。
一方で、新人に対しても一方的にならない形で指導をしていく必要があります。「言うべきことははっきりと伝える」とはいえ、言い過ぎることも効果的ではありません。「言わなくてもわかるはずだろう」というスタンスでかかわることも、新人とのかかわりでは不十分になります。そして、OJTとして新人育成に本気で向き合い、「君には成長してほしい」という気持ちを忘れないことなどを忘れないことも大切です。
アサーティブなマインド(新人と向き合う真摯な姿勢)と、適切な伝え方、聴き方のスキルを持つことで、OJTはより効果的に新人育成に関わることができるようになります。そしてそうした関わりを自ら作ることで、OJT自身が成長することになるでしょう。