事例3:
多様な価値観をまとめる
リーダーシップを養う
〜A社の場合〜
様々なチームメンバーの心をつなぎ、信頼関係を築く力をつける
販売店舗のスーパーバイザー、及び販売店のチーフ層は、若手社員、ベテラン派遣社員、アルバイト社員等、多様な職種や価値観のスタッフまとめることが業務の一つとなっています。とはいえ、多様な価値観を持つスタッフの指導は簡単なことではありません。厳しく言うと辞める、言わないとサービスの質が統一されないというジレンマの中、スタッフ一人ひとりを尊重しながらも、よいサービスにつながる指導の一環として、アサーティブトレーニングが導入されました。
- 業態:
- 小売販売、サービス業
- 導入研修:
- アサーティブトレーニング研修(例:1日研修)
- 対象人数:
- スーパーバイザー 60名
接客に関しては自信があるが、スタッフ指導に関しては悩む
A社では、新しい組織編成の中で、全国の店舗を統括・指導するスーパーバイザー制度が始まるところでした。店長の個性と特性に支えられた各店舗への個別対応が求められる状況に加えて、店舗内にはベテラン層から新人、パートタイム社員、学生アルバイトまで実に多様なスタッフがいるために、チームを統制していくことが難しく、せっかく育てた若手が店長との人間関係がうまくいかずに辞めていく、という課題がありました。
スーパーバイザーは、もともと店長として営業力も接客力も非常に高い人材です。自分はこれまで自分でやってきたのに、どうしてこの店舗ではできないのだろうと、ついつい批判的な指導に陥りがちという面がありました。また“職人気質”であるために「背中を見て学べ」という姿勢になり、そのために指導の結果に結びつかないという問題もありました。
上からは売り上げを伸ばせというプレッシャー、現場からは何とかしてほしいという悩みが上がるなど、上と下との間に挟まれてコミュニケーションに悩むこと。上からのプレッシャーを適切な形で現場に降ろしていくと同時に、現場の声をまとめて必要であれば上に反映していかなければならないことなど、「組織のハブ」としてのポジションで悩むこともありました。スーパーバイザー同士が会って相談できることは物理的に難しく、悩みを一人で抱え込みがちになることもあり、それぞれが孤立感を抱えていました。
各店舗に対して適切な指導が行えるスキルと自信をつけると同時に、スーパーバイザー同士で横のつながりを作り、協力し合える体制をつくりたい。そのために、アサーティブコミュニケーション研修の導入に至りました。
多様なスタッフを尊重しながらも、言うべきことは言う、というスキルを学ぶ
スタッフ一人ひとりを大切にしようという気持ちを、A社のスーパーバイザーは明確に持っていました。売り上げをあげていくためには店舗チームの力をつけていく必要があることも痛感していました。その意味で、スタッフと向き合う真摯な姿勢やスタッフを大切にしようとする意識とモラルは、非常に高い受講生でした。
ですから、本研修ではアサーティブなスキルを中心に学び、実際にアサーティブに指導ができるようになるための、実践的なトレーニングを行うことに主軸を置いたプログラムとなりました。
1日(7時間)プログラムは、下記の構成になっています。
1.アサーティブの概論:自身のコミュニケーションの課題の認識とアサーティブの理解
2.検討事例を使っての演習
3.各自の課題抽出と整理・ロールプレイ、まとめ、アクションプランの作成
9:00-12:00 講義 / 演習
-
- オリエンテーション(グループワーク)
- 自己紹介・周囲を巻き込むための必要なコミュニケーションとは
-
- 自分のコミュニケーションを振り返る(個人ワーク・ペアワーク)
- 特徴的なパターンを知る / 自らの特徴を知る / アサーティブなコミュニケーションの特徴を知り実現を考える
-
- 事例検討 ロールプレイ体験(ペア / グループワーク)
- 具体的な事例を通じてアサーティブ・コミュニケーションを体験する
- 1: 「店長への指導」/ 2: 「スタッフへの指導」
12:00-13:00 休憩
13:00-17:00 実践演習(ロールプレイ)
-
- 各自の課題抽出と整理
- 課題の抽出と整理、伝え方の説明 / 交渉に向けての各自の準備
-
- グループでのロールプレイ実践
- 各自の事例を使って、グループ内で全員が演習
- グループでの成果発表
- アクションプラン作成・質疑応答
- まとめ・終了
本研修では7時間の終日研修であったこともあり、受講生一人ひとりの個別のケースを、複数の講師のサポートのもとにロールプレイで取り組むことができました。担当店舗のスタッフとの関係に悩む人、厳しすぎる店長への指導に迷う人、報告がない店長への注意の仕方に悩む人など、受講生の課題は千差万別でしたが、グループの中で悩みを出し合い、個々のロールプレイ課題に対して相互でフィードバックを出し合うなど、協力的な雰囲気で研修は進んでいきました。
年齢や経験年数は異なっても、スーパーバイザーという役割は共通しているので、お互いに協力しながらそれぞれのコミュニケーションの課題に取り組むことができたと思います。
「スキルを身につけることで、スタッフ間の信頼関係を築くことができる
スタッフを尊重しながら、具体的に「ほめる」「叱る」「依頼する」「注意する」など、アサーティブに伝えるスキルを身につけることで、スーパーバイザーとしての力を発揮できるようになることがわかりました。マインドはしっかりと持っていて、本気で関わろうとしているスーパーバイザーであるからこそ、具体的な伝え方のスキルが沁みこむように入って行ったように思います。
スーパーバイザーであることは、必ずしも「上」であることとは限りません。あくまで問題解決の対等なパートナーとして、店長と信頼し合い、協力できる仲間として関われる関係を土台とする必要があります。
上目線では相手の心は閉じてしまう、下手にでると相手に伝わらない、遠回しでは伝わらない。だからこそ、対等に、誠実に、率直にアサーティブに伝えるスキルは、今回の受講生にとって、とても必要で実践的なものになると思いました。
コミュニケーションは自分から変えていくこと、その結果、スタッフとの信頼関係が醸成されるのだということを、受講生の取り組みによって痛感した研修となりました。