3つのタイプとアサーティブとの違い

「ドッカン」「オロロ」「ネッチー」
いずれのタイプも、実は自己中心的

3つのタイプのうち、攻撃的タイプ(ドッカン)の人は一見、本人もまわりも、アサーティブなスキルは必要ないと思いがちです。講座の際にも、「自分は言いたいことを何でも伝えられるので、コミュニケーションには問題がない」と言う方がときどきいます。
また、典型的な「オロロ」タイプの人にとっては、何でもはっきりと主張する人は、いつも自信たっぷりな存在でうらやましく見えるかもしれません。


しかし、よく話を聞いてみると、決して人間関係がうまくいっているというわけではなく、実は悩みがあると言うのです。はっきりモノを言い過ぎて人を傷つけてしまうことに罪悪感を持っている、と。いわく、「本当は一方的な伝え方をしたいわけではない。でも、どうしても自分の気持ちを抑えきれず、ついつい言いすぎてしまい、相手を黙らせてしまう。そんな自分を責めてしまう。」


たとえ自分のコミュニケーションに自信があっても、必ずしもそれが相手にとって「気持ちのいい」人間関係をつくるものではない場合があります。
「何でもはっきり言える」ということと、自分も相手も同じくらい大切にして「誠実に率直に伝えられる」ことは、実は似て非なるものなのです。


「ドッカン」タイプのコミュニケーションには、自分の間違いを指摘されたくない、自分が負けたくない、といった自己防衛心理が働いています。つまり、「はっきりと何でも言う」ことで、自分を中心にして相手に要求を出していることになります。


「ネッチー」タイプも、実は自分を中心に置いています。そして「オロロ」タイプも同様です。
オロロタイプは、表面的には相手中心のように見えますが、その裏には、嫌われたくない、傷つきたくない、という自己中心的な心理が働いています。態度としては相手に合わせているように見えますが、見つめているのは自分なのです。

自分中心でも相手中心でもないのがアサーティブ

3つのタイプに比べ、自分中心にも相手中心にもならず、コミュニケーションの問題を「目の前で起きている問題」として捉え、その解決を考えながら誠実に対等に振る舞うのがアサーティブな態度です。見つめているのは、自己満足ではなく、「問題解決」の方向なのです。


3つのタイプとアサーティブな態度の違い

  • 攻撃的(ドッカン):自分はOK / 相手はOKではない
  • 受身的(オロロ):自分はOKではない / 相手はOK
  • 作為的(ネッチー):自分も相手もOKではない
  • アサーティブ:自分も相手もOK

コミュニケーションタイプについて、実際にはドッカン、オロロ、ネッチーの3つのうち、どれか1つだけ当てはまっているということはまずありません。
むしろ、誰にでも3つともひそんでいて、「プチ」ドッカン、「プチ」オロロ、「プチ」ネッチーというように、相手や状況によって無意識に使い分けている場合がほとんどです。


また、これらのタイプは、「悪い」から絶対にやめるべきというものでもありません。
なぜなら、私たちはあえて「ドッカン」になることが必要な場合もあれば、「オロロ」「ネッチー」にならざるをえないときもあるからです。


本当はアサーティブに振る舞える方がいいと頭では分かっていても、怒りの感情に支配されて一方的に相手を責めてしまったり、はっきり伝えないといけないのにと思いつつも、つい自分の気持ちを飲み込んでしまったり。ほめられた時、素直になりたいと思っていても、「またそんなこと言って、何かあるんですか?」と斜に構えてしまったり。


むしろ問題は、無意識のうちに人間関係が1つのパターンに固定化してしまう場合です。相手との関係が「ドッカン」だけ、「オロロ」だけ、または「ネッチー」だけになってしまうと、誠実で対等な関係からどんどん離れていってしまうからです。


まずは、自分の「伝え方の癖」に気づき、そこに意識的に向き合うこと。
そうすることで、これまでとは違う、新しい「伝え方」を選べるようになります。3つのタイプのどれかに陥ったとしても、あまり深刻に捉えすぎず、「今度はこうしよう」と前向きに考えるようにしてみてください。

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