伝え方のヒントブック
学習編:
自分も相手も尊重する“心の姿勢”が大切
自分も相手も尊重するとは
伝えるためのスキルは重要です。自分の言いたいことを相手に理解できるように伝えるには、具体的にわかりやすく話す必要があります。しかしながら、どんなにロジカルに話しても、流れるように話しても、実は私たちが相手を見ている心の中の“まなざし”がアサーティブでなければ、こちらのメッセージは相手に届かないということがあります。
“まなざしがアサーティブである”とは、相手を対等な人間として尊重するということです。
ふだん、同じ職場で働く上司や同僚、後輩に対して、「いい加減な上司」「やる気のない後ろ向きの部下」などと、心のなかで見下したり、「こんな人だから」とレッテル貼りをしていることはありませんか? 苦手な相手のことを「〇〇な人」と決めつけて話を始めると、「あなたはよくない」という無言のメッセージとなって伝わっていきます。このような相手への決めつけや上から目線は、声のトーンや態度、振る舞いから、必ず相手に伝わると思ってください。
相手に非を認めさせたい、自分の正当性を証明したい、自分がどんなに迷惑しているかをわからせたいなど、「自分:正しいvs 相手:間違っている」というスタンスで話し合いをしようとすると、相手はそれを敏感に感じとり、すぐに心の扉を閉じてしまうのです。
相手は対等な人間であることを意識する
問題解決のための建設的な話し合いをしたいのであれば、話し合いの本来の目的を見すえて対等に話すことが必要です。
そのためにはまず、「相手も相手なりに一生懸命がんばっている一人の同じ人間である」ことを意識します。相手も自分も完璧な人間ではありません。時には間違うこともあります。「相手には相手の事情があるし、自分にも至らないところがあるかもしれない」と認めることで、対等な協力体制を築いていくことができるでしょう。
例えば、話し合いの本当の目的が、お互いに協力しながらチームの力をつけていくことであるならば、その1点にフォーカスします。“いつも〇〇だよね”などという、相手を決めつけた言い方はしません。役職や責任の大きさは違っても、よい仕事をしていきたい、よいチームをつくりたいという思いは共通していることを忘れなければ、攻撃的な気持ちや「どうせわからないでしょう」というあきらめの気持ちのまま、話し合いを始めることを避けることができるでしょう。
対等な話し合いの出発点は、“自分はどうしたいのか”
話し合いのなかでしばしばすれ違いをおこしているのは、自分としては「されど」と思っていることを、相手は「たかが」だと認識しているという、事の重要性についてのギャップが存在している場合です。
私たちはしばしば、事の重要性を伝えることをしないまま、相手に要求を伝えることがあります。たとえば、非常に重要な報告書なのに「できるようだったら、“ちょっと”やっておいてもらえるかな」と言ってしまったり、緊急の案件を確認したいのに、「お時間があるときでいいので、ご相談をさせていただけますか」と言ってしまったり。
「ちょっとでいいので」などと遠回しな言い方ではなく、「重要な案件なので、時間を取ってほしい」「とても大切なことなので、ぜひとも協力してもらいたい」とはっきりと言葉にして伝えない限り、相手の意識には届かないのです。
相手への決めつけをやめ、自分の望みを明確にして話し始めることで、対等な話し合いのスタートラインにつくことができるのです。